歯とお口の豆知識
矯正治療の抜歯
みなさんこんにちは。石井です。
新型コロナウイルスの感染拡大で様々ところに影響が出ていますね。僕自身も学会関係の会合が中止になったり、保険改正の集団指導が開催されなくなったりと、あらゆる“集まり”が中止になっています。
人と人が交流することで物事や経済は回っていくものなので、今の状況が続くことは本当に問題だと思います。何とか早く終息に向かって欲しいものです。
さて、ここのところブログであまり有益な情報発信ができていなかったので(汗)、今回は患者様からよく質問のある“矯正治療の抜歯”について書いてみたいと思います。
矯正治療をする際に、「抜かなくても治せます」と言われると、耳障りは良いですよね。メリットやデメリットがあることも説明せずに、どんな患者さんでも“非抜歯”を勧めるのは、単純に「患者さんに受けが良いから」という理由以外に他なりません。
もちろん、抜かずに治療すべき患者さんは“非抜歯”治療を行うべきですが、抜いて治療するべき患者さんは“抜歯”治療を行うべきです。どちらが良いというわけではないですし、抜歯と非抜歯のボーダーラインの患者さんでも、抜歯と非抜歯では治療結果は明らかに違います。繰り返して言いますが、どちらが良いわけというわけではないんです!
抜歯と非抜歯のメリットとデメリットを簡単に述べると・・・
抜歯のメリット:
- 多くのスペースが確保できる
- 口元が下がる(口が閉じやすくなる)
抜歯のデメリット:
- 健康な永久歯を失う
非抜歯のメリット:
- 健康な歯を失わない
- 多くの場合治療期間が短い
非抜歯のデメリット:
- 多くのスペースは確保できない
- 口元の改善はほとんどできない
当たり前ですが、お互いのメリットとデメリットが裏表の関係です。“抜歯のデメリット”が“非抜歯のメリット”なわけですから、その部分だけを強調すれば「非抜歯が良い」と思われてしまいます。
しかし、その逆も真実です。“非抜歯のデメリット”は“抜歯のメリット”なわけです。そのメリットとデメリットを天秤にかけて、どちらに分があるのかを見極めながら診断し、治療計画を立てるわけです。
患者様が誤解されていることが多いのが「抜歯はスペースを作るためのもの」と信じていることです。スペースを確保できれば抜歯する必要はなくなる、と思っている患者様が多くいらっしゃいますが、それは半分正しくて、半分間違っています。
抜歯することで多くのスペースを作ることができることは事実ですが、抜歯の目的はスペースを作ることだけではありません。スペースを作ることが目的であれば、歯列の拡大等でスペースをある程度作ることが可能です。
抜歯することの大きな目的の一つが、メリットにも書いた「口元を下げる」ことです。
残念ながら非抜歯治療で積極的に口元を下げることはできません。口が閉じにくいような口元をされている患者さんは積極的に口元を下げることで、口が閉じやすくなり、調和のとれた口元になります。
上の写真の患者さんの歯列を見ると、そんなに凸凹もなくて、歯を並べるだけであれば、歯を抜かなくても並びそうですよね。しかし、やや口元が出ていて、お口を閉じにくいバランスをしています。
そこで、上下の歯を抜歯して治療しました。
歯並びが整っただけでなく、口元が下がって調和のとれた口元になったことが分かると思います。これが抜歯治療の大きな目的の一つです。理想的なE-lineになりました。以前のブログでE-lineについて書いたので、興味のある方はご一読下さい。
間違って欲しくないことは、決して抜歯治療を推奨しているわけではありません。
抜歯治療にも非抜歯治療にもメリットとデメリットがあります。患者様それぞれに適した治療方法を検討し、治療を進めていくことが何よりも大切です。
久しぶりに長々と書いてしまいました(汗) 矯正治療の抜歯について少し理解が深まったでしょうか?
矯正治療についてはネット上にも情報が溢れていて、情報の渦に溺れそうになってしまいますよね。気になることがあればお気軽にご相談下さい。できるだけ分かりやすくご説明したいと思います。